『通訳翻訳研究への招待』
『通訳翻訳研究への招待』(16号〜)
『通訳翻訳研究への招待』は日本通訳翻訳学会(JAITS)が1年に一度発行するWeb Journalです。
すでにお知らせした通り、『翻訳研究への招待』は本号(16号)より『通訳翻訳研究への招待』と改題し、翻訳研究に加えて通訳研究の論考も収録することになりました。同時に紙面の体裁も若干改めました。今後も内容と体裁をWeb Journalに相応しいものに修正していきたいと思います。
(『通訳翻訳研究への招待』16号「編集後記」より抜粋・修正)
編集委員会 Editorial Board
- 編集委員長 Editor-in-chief
- 高橋 絹子
- 副編集委員長 Vice-editor-in-chief
- 三ツ木 道夫
- 編集委員 Associate Editor(順序不同)
- イザベル・ビロドー・古川典代・ラングリッツ久佳・吉田理加
『翻訳研究への招待』とは
『翻訳研究への招待』(1号〜15号)
Susan Bassnettは1970年代の翻訳研究を回想して、次のように書いている。当時、翻訳の研究は応用言語学の小さな一角を占めるに過ぎず、文学研究における位置はさらに小さく、勃興しつつあったカルチャル・スタディーズには場所すらなかった。deconstructionの時代だというのに、いまだに「正確な翻訳」とか「忠実な翻訳」について語っているという、驚くほど時代遅れの存在で、文学研究のセミナーから翻訳のセミナーに移動することは20世紀末から1930年代に移動するようなものであった、と。(注1)
このようにTranslation Studies(翻訳研究)はヨーロッパにおいても比較的新しい学問分野である。1970年代後半から徐々にひとつのディシプリンとして分離成立して行き、やがてその大きな分枝としてInterpreting Studies(通訳研究)が生まれる。しかし日本の場合はいささか事情が異なる。70 年代には翻訳研究の萌芽すらなく、90 年代入ってようやく孤立した数少ない研究者によって散発的に翻訳研究に該当するような研究が現れるのである。そこにはおよそ30 年のずれがある。ディシプリンとしてはいまだに確立しておらず、当然、学会も存在しない。2000年9月に日本通訳学会が設立されてから、学会誌『通訳研究』に徐々に翻訳研究の論文が掲載されるようになるが、それはあくまでも通訳研究に付随する翻訳研究であるにすぎなかった。しかし2005 年に鳥飼玖美子会長をはじめとする学会理事の協力を得て翻訳研究分科会が作られ、ようやく本格的な翻訳研究への足がかりができた。これには立教大学や神戸女学院大学、青山学院大学などいくつかの大学の大学院に学問としての翻訳研究の場ができたことがひとつの要因になっている。
われわれ翻訳研究分科会の活動は始まったばかりであるが、徐々に広がりを見せている。この論文集をつくるきっかけとなったのは、カナダのAssociation canadienne detraductologieが出している翻訳研究専門誌TTR : traduction, terminologie, rédaction が日本の翻訳研究特集号2を企画したことである。TTR の特集号にはDublin City UniversityのMinako O’Hagan さんの呼びかけに応えて分科会の何人かのメンバーが執筆することになったのだが、この際、日本語でも翻訳研究の論文集を出して日本の翻訳研究の存在をアピールしようではないかということになったのである。その結果がこのささやかな論文集である。
(『翻訳研究への招待』1号「まえがき」より抜粋)
1. Bassnett: The Translation Turn in Cultural Studies, In Bassnett, S. and Lefevere, A. (1998). Constructing Cultures: Essays on Literary Translation, Clevedon: Multilingual Matters.